フォルトゥナ、世界の王妃よ ~ 「カルミナ・ブラーナ」 より ~

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序奏部 Fortuna Imperatrix Mundi (フォルトゥナ、世界の王妃よ)

1.O Fortuna (おお、フォルトゥナ)
2.Fortuna Plango vulnera (フォルトゥナのつれなきに)

序奏部にあたる 「おお、フォルトゥナ」 は一番最後の25曲目にコーダとして回帰されていますが
そこには自然の息吹も、人生の喜びも、すべてが ≪フォルトゥナ(運命)の輪≫ の内に収められる
という運命の偉大さを歌おうとする意図が生かされています。
初演のセンセーショナルな成功の直後、自作の出版担当者に 「これまで書いたもの、
それに不運にも君が出版してしまったすべての作品を破棄してもらいたい」 と、オルフに
語らせたほどのこの作品、神々しいまでの大合唱の迫力をぜひ生で味わいたいものです。

※ カルミナ・ブラーナについて、「片翼の天使・セフィロス」 のページにも書いてあります。
よろしければ、こちら もあわせて ごらんください。

1. O Fortuna

O Fortuna
velut luna
statu variabilis,
semper crescis
aut decrescis;
vita detestabilis
nunc obdurat
et tunc curat
ludo mentis aciem,
egestatem,
potestatem
dissolvit ut glaciem.

Sors immanis
et inanis,
rota tu volubilis,
status malus,
vana salus
semper dissolubilis,
obumbrata
et velata
michi quoque niteris;
nunc per ludum
dorsum nudum
fero tui sceleris.

Sors salutis
et virtutis
michi nunc contraria,
est affectus
et defectus
semper in angaria.
Hac in hora
sine mora
corde pulsum tangite;
quod per sortem
sternit fortem,
mecum omnes plangite !

2.Fortune plango vulnera

Fortune plango vulnera
stillantibus ocellis
quod sua michi munera
subtrahit rebellis.
Verum est, quod legitur,
fronte capillata,
sed plerumque sequitur
Occasio calvata.In Fortune solio
sederam elatus,
prosperitatis vario
flore coronatus;
quicquid enim florui
felix et beatus,
nunc a summo corrui
gloria privatus.Fortune rota volvitur:
descendo minoratus;
alter in altum tollitur;
nimis exaltatus
rex sedet in vertice
caveat ruinam!
nam sub axe legimus
Hecubam reginam.
おお、フォルトゥナ(運命)よ

おお、フォルトゥナ(運命)よ
月のように
姿は変わる
常に満ち
常に欠ける
不快な世もつらいのは一時、
次には気まぐれに喜びを与え、人の心を弄ぶ
貧困も権勢も
氷のごとく溶かし去る

恐ろしく
虚ろな運命よ
運命の車を廻らし
悪意のもとに
すこやかなるものを病まし
意のままに衰えさせる
影をまとい
ヴェールに隠れ
私を悩まさずにはおかない
では、なす術もなく
汝の非道に
私の裸の背をさらすとしよう

すこやかなるものも
美徳も
運命は私から追いやり
苦しめ
思うがままにさいなむ。
今こそ
ためらわず
弦をかき鳴らせ
強き者すら打ち倒す運命の一撃に
皆の者よ、私とともに泣くがよい!

フォルトゥナのつれなきに

我は運命の傷に泣き悲しむ。
目にあふれる涙
かつて与えてくれた恵みを
運命は悪意に満ちて奪い去る
真実、書にもいわく
緑なす黒髪の者も
時が来れば失う
その髪を(※1)

我もかつて誇らかに
フォルトゥナの玉座に座っていた
繁栄にみち
色とりどりの花の王冠を戴いていた
だが、かつていかに栄え
幸福と恵みに満ちていようと
今はその頂きから転げ落ち
名誉も奪われてしまった

フォルトゥナの車はさらに廻り
我は落ちぶれ、卑しめられて
他の者が高きに昇る
いとも誇らかに王は頂きに座っている――
だが破滅を恐れるがよい!
運命の車軸のかげに記されしは
滅びし女王ヘクバ(※2)の名。

※2 ヘクバ
ヘカベー。 滅亡したトロイアの女王の名。

※1 時が来れば髪を失うというのは、時の流れの無情さを示すものと思われますが、別の訳では
運命の女神がみせるのは禿げた後ろ頭とされており、それだと女神が前を向いているうちに
前髪(チャンス)をつかめという意になるようです。