【文化】西アフリカの音楽

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西アフリカの音楽

西アフリカの音楽は近年、ユッスー・ンドゥールや、サリフ・ケイタたちの活躍で世界に知られるようになってきました。

サバールのドゥドゥ・ンジャエ・ローズや、ジェンベのママディ・ケイタも、何度も来日しています。
彼等以外にもアフリカの音楽家が来日公演をするようになり、また、日本在住のアフリカ出身ミュージシャンも増えてきています。というわけで最近は「生のアフリカの音」に接する機会は多くなってきました。

一般的に「アフリカ、イコール太鼓」という、単純な図式でアフリカ音楽をイメージされることは多いのですが、メロディーやハーモニーの美しさ、豊かさも、素晴しいものです。

ここでは、西アフリカのいろいろな楽器や音楽について紹介してみたいとおもいます。

■ジェンベ
西アフリカの広い地域で演奏されている、杯型の太鼓。素手でたたきます。

ドゥンドゥン(大)、サンバン(中)、ケンケニ(小)はバチを使います。立てて置き、両手バチで叩く方法と、横に寝かせ、あるいは肩からつるして片手バチで叩く方法があり、片手の場合はもう片方の手でカウベルをたたく事が一般的です。1人で音程(大きさ)の異なる複数の楽器を並べて叩く事も多い。

ジェンベはこれらの中低音ドラムと一緒に演奏され、それぞれの異なった音色の組み合わせとリズムの複合(ポリリズム)によって曲が構成されています。

ジェンベフォラと呼ばれるマスタードラマーは、数百種類のリズム(曲)を持っている、と言われています。そして、それらの曲にはそれぞれダンスがあります。

地域や部族によって演奏形態とリズムに違いがありますが、アンサンブルの音色も地域によって変化します。

アフリカ音楽を研究しているU氏によれば、セネガルのようにサハラ砂漠に近接する国々では、乾燥した気候のために太い樹木が育ちにくく、そのために大型のドゥンドゥン等は、なかなか作れません。その結果、太鼓の音色も高めになる→空気が乾いているためますます高音に・・・ということになります。

一方、ギニアなど高温多湿の地域は大木が育つため、径の大きい、低い音の太鼓が手に入ります。

そしてアンサンブルの低音部が充実することで、多人数の編成も可能になります。

 

■トーキングドラム
写真は、セネガルの太鼓タマ。砂時計型の木のボディの両端にトカゲの皮を張り、ひもで両方のヘッドの縁をつないである。わきの下にはさんでこのひもを腕でしめつけることによって、音程に変化をつけることができます。

アフリカの太鼓は、情報伝達の手段として使われるものが多いので、広い意味でのトーキングドラムは数多く存在しますが、狭い意味では、この形のものをトーキングドラムと呼びます。

■バラフォン
いわゆる木琴。固い木でできた鍵盤を動物の皮でつないであり、下に共鳴のためのヒョウタンがついています。とても「アフリカらしい」音色の楽器だと思います。(主観的意見ですが)

全く構造が異なるカリンバやイリンバと呼ばれる親指ピアノの音も、バラフォンに似てアフリカを連想する力を持っていますね。

かつて「TOTO」の「アフリカ」という曲が大ヒットしたのも、その音の力が大きかったのではないでしょうか。(電子合成音だったと思いますが)「EW&F」も実に効果的にカリンバの音(たぶん本物)を使っていました。

■コラ
大型のヒョウタンに動物の皮を張った半球型の共鳴胴に、木のさおを取り付け、21本の弦を張った竪琴。

こちらはアフリカというイメージからは連想しにくい(全く主観的意見)美しくて繊細な音の楽器です。

ドゥンドゥンドゥンドゥン

サンバンサンバン

ケンケニとドゥンドゥンケンケニ(上)と
ドゥンドゥン(下)

タマタマ

バラフォン
バラフォン

コラコラ

アフリカの社会では、楽器は古来より重要な役割を果たしてきました。

「楽器は、精霊によって人間にもたらされたものである」という神話は多く存在しています。

したがって、それに触れることができるのは、限られた一部の人間だけでした。

それが、グリオ、ゲウェル、或いはジャリなどとよばれる、世襲制の伝承音楽家です。

文字のないアフリカ文化においては、シャーマンとしての彼等の役割は大変重要でした。

歴史を歌という形で伝え、儀式を司り、音楽で病気を直したり、

時には呪いをかけたりすることもできる彼等は、尊敬され、また怖れられていました。

そして偉大な王は、楽器の力、精霊の力を借りることによっていくさに勝ったり、

民を統治することができるのだ、といわれていました。

王様は王子が生まれると、かならず1人の優秀なグリオを彼に付けます。

グリオは常に彼につきそい、終生彼を助けることになるのです。

グリオの役割は現在でも生きています。

ンデップという、サバールのプログラムは、病気を直すために現在でも行われています。

また、数年前にはフランスの新聞記者たちが半信半疑でサバールのシャーマンを

取材に出かけたところ、かなり「濃い」めのデモンストレーションを受け、

床にのびている写真が紙面をかざった、という事件がありました。

サッカーW杯フランス大会で、ブラジルのエースストライカー、ロナウドが、

フランスとの決勝戦の直前に原因不明の奇妙な病気になったのも、

フランスチームのセネガル出身者が「まじないをかけたからのではないか」と、

あるグリオは言っています。

確かに、ロナウド以外のブラジル選手の動きも精彩を欠いていましたよね。

ドゥドゥ・ンジャエ・ローズはとても興味深いことを語っています。

「タムタムを叩いていると、何者かが踊りだすのが見えることがあります。普段はみえないものが。」

「演奏に熱中してくると、叩いているのが、このドゥドゥ自身ではなくなってきます。

私と他の何者かがひとつのタムタムを一緒に演奏しているのです。」

「それは精霊にちがいない、と私は思っています。なぜなら、タムタムは精霊が作った楽器だからです。」

最近の「癒し」ブームのなかで、

ヒーリング・ミュージックやミュージック・セラピーという言葉もよく使われるようになりました。

音楽が持っている力を、現代文明はようやく認めるようになったのでしょうか。

宇宙のリズムと身体の鼓動を正しくチューンすることによって、人を癒したり、

社会の秩序をコントロールしていた、音楽家=シャーマンたち・・・・彼等と

その音楽に学ぶべきことはたくさんあると思います。