Giuseppe Fortunino Francesco Verdi Se quel guerrier io fossi ...Celeste Aida ≪AIDA≫ Atto Primo |
エジプトの若い将軍ラダメスはもし自分がエチオピア征討の将に指名されたならば、自軍を勝利に導き、
恩賞として密かに愛する女奴隷アイーダとの結婚の許しを得る決意を歌う。
<イタリア語歌詞> | <日本語歌詞> |
(RADAMÈS) | (ラダメス) |
Se quel guerrier io fossi! | 軍に将たる |
se il mio sogno S’avverasse! | 誉(ほまれ)をになわば |
Un esercito di prodi da me guidato… | 気負えるつわものを率い |
e la vittoria… e il plauso di Menfi tutta! | 死力つくし あだ打ち破りて |
E a te, mia dolce Aida, | 生きてかえらば |
Tornar di lauri cinto… | アイーダに言おう |
Dirti: per te ho pugnato, per to ho vinto! | 『ああ このいさお お身ゆえ』 と |
チェレステ アイーダ フォルマ ディヴィーナ Celeste Aida, forma divina, |
清きアイーダ あで姿 |
ミスティコ セルト ディ ルーチェ エッ フィオル mistico serto di luce e fior, |
御身は花とうるわし |
デル ミーオ ペンスィエーロ トゥッ セーイ レジーナ del mio pensiero tu sei regina, |
きみこそはとこしえに |
トゥッ ディ ミーア ヴィータ セーイ ロ スプレンドル tu di mia vita sei lo splendor. |
我があおぐ光よ |
イル トゥーオ ベル チューロ ヴォルレーイ リダルティ Il tuo bel cielo vorrei ridarti, |
風はなごみ 空冴ゆる |
レ ドルチ ブレッヅェ デル パートリオ スオル le dolci brezze del patrio suol; |
きみが祖国の地に |
ウン レガル セルト スル クリン ポサルティ un regal serto sul crin posarti, |
きみをともないて きみにふさわしき |
エルジェルティ ウン トローノ ヴィチーノ アル ソル アー ergerti un trono vicino al sol; ah! |
かんむりを捧げまし |
Celeste Aida, forma divina, | 清きアイーダ さやかにも |
mistico raggio di luce e fior, | ひのごときみは輝く |
del mio pensiero tu sei regina, | きみこそはとこしえに |
tu di mia vita sei lo splendor. | 我があおぐ光よ |
Il tuo bel cielo vorrei ridarti, | 風なごみ 空冴ゆる |
le dolci brezze del patrio suol; | きみが祖国の地に |
un regal serto sul crin posarti, | きみをともないて きみにふさわしき |
ergerti un trono vicino al sol; | かんむりを捧げえなば |
un trono vicino al sol, un trono vicino al sol! | うれしと思う たのしと思う |
《直訳》
もし私がその戦士であったなら!
もし私の夢が実現できたなら!
・・・勇士の一隊を私が率いて・・・戦いに勝ち
メンフィスじゅうの喝采を得るのだ!
そしておまえのもとに いとしいアイーダよ 栄冠(月桂冠)を戴いて帰郷し
おまえに言おう
「おまえのために戦い おまえのために勝ったのだ」と!
清らかなアイーダ 神の御姿よ
光と花の神秘な美しさ
おまえこそわが思いの女王
おまえこそわがいのちの輝き
おまえの祖国の美しい空と やさしいそよ風を
おまえに返してあげたい
王冠をおまえの髪に飾り
おまえのために玉座を太陽のそばにまで高めてあげたい
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世界でもっとも上演の機会が多いスペクタクル・オペラ。
第2幕で流れるアイーダ・トランペットという独自のトランペットで奏でられる凱旋行進曲はサッカーの応援歌として有名です。
当時のヴェルディは相当な金持ちになっていたうえ、世界的に名声も得ていて、彼に新作のオペラを頼むのは相当なお金が必要だったため、 依頼する人もなく、なかば隠居生活に入り、のんびりと過ごしていました。
そこへ友人で台本作家のカミーユ・デュ・ロークルが、エジプトのカイロにスエズ運河開通(1869年11月17日)記念(※)に 建立されたテアトロ・ケディヴァーレのこけら落としに上演するオペラを書いて欲しいという話をもってきました。
依頼人は当時のエジプト総督イスマイル・パシャ。
ヴェルディは丁重に断りましたが、1ケ月後、勝手に送られてきた筋書きを読んだところ、なかなか面白かったため、 作曲する気になり、エジプト以外の国の著作権は自分のもの、作曲料は破格の15万フランで引き受けました。
学者オギュスト・マリエットの原作からフランス語台本をつくり、 それをもとにアントニオ・ギスランツォーニによってイタリア語台本が作られました。
普通、オペラのストーリーは原作となる小説や戯曲が存在しており、アイーダのようにオリジナルは非常に珍しいです。
古学者という文学的には素人が原作を書いただけに、話の設定に無理が積み重なっており、 なぜエチオピアの王女アイーダが身分も知られず奴隷になったのか、最初からいきなり疑問がわきますが、
華麗な音楽とオペラの雰囲気はそういうものだと納得させてしまう勢いがあります。
※ スエズ運河開通記念という説が多数ですが、本当はたまたま劇場開設と時期が重なっただけという説もあります。
当初は1871年1月に初演されるはずでしたが、衣装、装置などを作成していたパリがフランスとプロシアの戦争で包囲されてしまったため、
当初の予定より約1年遅れて、1871年12月24日にカイロ歌劇場で初演。世界各国の観客に熱狂的に迎えられました。
このオペラでヴェルディは、今まで声のみ中心に考えられていたイタリア・オペラ界にオーケストレーションの従来にない斬新さをしめし、
作曲技法および形式のうえで、新たに完成されたイタリア・オペラを生み出すことに成功しました。
ワーグナーの影響が多く見受けられるものの、それをヴェルディ独自のものに消化することによって、
当時世界中を圧巻していたワーグナーのドイツ・オペラに対抗し得る芸術的完成度を持ったイタリア・オペラが誕生しました。
ヴェルディはアイーダをイタリア初演時の歌手をつとめた、愛人のシュトルツが歌うことを想定して書きました。
彼女の声はダイヤのカットのように透き通り、銀の鈴のように甘美だったといわれています。
アイーダのアリア「わが故郷に」には、ソプラノ・ドラマティコにはむずかしい“ハイC”があり、
これを決められなければアイーダ歌いにはなれません。
かといってこの音が簡単にでるようなソプラノ・リリコの歌手が歌うとほかの部分の魅力が損なわれてしまいます。
ハイCの音を決められるかどうか、それがアイーダ役が成功するかどうかの鍵のひとつです。
「アイーダ」 のあらすじ
第1幕 Atto primo
ファラオ(ラムセス3世?)が支配していた時代、エジプトの首都メンフィスの王宮広間。
祭司長ランフィスが、若き護衛隊長ラダメスにエチオピアがエジプトに進攻し、戦争が迫ろうとしていると話している。
イシスの女神のお告げにより決まった軍勢の最高司令官を王に告げるためランフィスが去ると、ラダメスはその者が自分であればと願う。
彼は王女アムネリスの奴隷であるエチオピアの王女アイーダを愛している。
そこへラダメスを愛している王女アムネリスがやってくる。
しばらくして入ってきたアイーダと彼女を見るラダメスの様子に、アムネリスはアイーダが恋仇なのではと疑いをもつ。
使者がきて、エチオピアの王アモナスロに率いられた軍勢がテーベまで攻めてきたと報告する。
国王はイシスの神が告げたとして、総指揮官にラダメスを命ずる。
アムネリスは一本の旗をラダメスに与え、栄光を祈るが、アイーダは父と恋人の戦いに葛藤し、自らの死を願う。
メンフィスにある火の神プタハの神殿。祭壇にいるランフィスのもとに武装していないラダメスが巫女たちに導かれてやってくる。
ラダメスの頭には銀のヴェールがかけられている。
ランフィスは神にエジプトの勝利を願い、軍司令官ラダメスに聖なる武具を授ける。
第2幕 Atto secondo
戦いはエジプトの勝利に終わった。アムネリスは奴隷女たちにかしずかれ、凱旋の祝宴に出る用意をしている。
アムネリスはアイーダにやさしい言葉をかけながらも注意深く観察し、アイーダが恋仇なのか見極めようとする。
ラダメスが死んだと言われたときと、それが嘘だと知ったときのアイーダの様子にアムネリスはアイーダがラダメスを愛していると確信し、
怒りのままに自分の恋仇だと明かす。アイーダは「私だって世が世なら・・・」と誇りを持って叫ぶが、すぐにひれ伏して許しを乞う。
テーベの都の城門。凱旋行進曲のなか、エジプトの軍隊が凱旋し、最後にラダメスが現れる。
望みをかなえようという王にラダメスはエチオピア軍の捕虜たちへの恩赦を望む。
捕虜のなかには単なる隊長の格好をしたアイーダの父、エチオピア王アモナスロもいた。
駆け寄るアイーダにアモナスロは身分を明かすなとささやき、捕虜への慈悲を請う。
ランフィスと祭司たちは皆殺しを主張するが、民衆も慈悲をさずけるよう願い、折衷案として王はアモスナロを人質とし、残りは解放される。
そしてラダメスへの褒美として、娘アムネリスを与えようという。アムネリスは喜び、アイーダは絶望に沈む。
アモナスロはアイーダに復讐のときは遠くないと低い声でささやく。
第3幕 Atto terzo
テーベ。宮殿の庭園にベールで顔を隠したアイーダが入ってくる。
彼女はここでラダメスを待っているが、来たのは父アモスナロ。
アイーダとラダメスが愛し合っているのを見抜いたアモスナロはアイーダにエジプト軍の通る道をラダメスから聞き出すよう迫る。
それを拒むと、アモナスロは祖国への愛を訴え、親子の縁を切るという。祖国を思い、アイーダは引き受ける。
ラダメスがやってきたため、アモスナロはヤシの木陰に隠れる。
変わらぬ愛を誓うラダメスは、ふたたびエチオピアが攻めてくる気配があり、また大将となって勝利を得れば、
王にアイーダとの結婚を望むつもりだという。
アイーダはふたりで逃げようといい、躊躇していたラダメスもアイーダの決意の固さに、ついに逃げることに同意する。
どの道を通れば軍隊に会わずに行けるかとの問いに、ラダメスはエジプト軍はナパタの谷を進軍すると教えてしまう。
隠れて聞いていたアモスナロは姿をあらわし、自分はエチオピアの王だと身分を明かす。
そこに裏切りを知った衛兵たちがくる。
ラダメスはアイーダとアモスナロを逃がし、自らはランフィスに「祭司長、私の身は貴方に」と進んで捕らわれる。
第4幕 Atto quarto
王宮の広間。アムネリスは捕らわれたラダメスにアイーダが逃げきったことを知らせ、彼女を忘れるなら
王に命を救ってくれるよう頼もうというが、ラダメスはきっぱりと拒絶する。
地下の裁きの間にラダメスが連行される。
裁きをくだす祭司たちが問いかけるが、ラダメスは何も答えず、死刑が決定する。
ラダメスが神の祭壇の下で生きたまま地下牢に閉じ込められることを知ったアムネリスは祭司たちを呪い、絶望する。
地下室の階段をおりるラダメスの上で地下牢の出口が石で封じられている。
出口を閉ざされ、死を待つのみとなったラダメスは地下室のなかから物音を聞きつける。
やがて現れた亡霊か幻想かと思われたその姿は逃げのびたはずのアイーダだった。
ラダメスの刑を知ったアイーダは、先んじてひそかにこの墓に忍び込んでいたのだ。
ふたりは抱き合い、大地に別れを告げる。
出口を封じた石の上ではアムネリスがひざまずいて、愛する人よ、安らかに眠りたまえと祈りを捧げている。
第2幕、エチオピア軍を破ったエジプト軍を迎える壮大な合唱、『凱旋の場の合唱』 の冒頭部分と間奏にあたる 「凱旋行進曲」。