簿記では誤りが生じないように、手続きをふんで各種の帳簿に誤りなく転記し、そして照合という作業を同時におこないます。
簿記で用いる帳票は実に様々です。仕訳帳、総勘定元帳・・
「簿記の流れと帳簿」は、以下のものになります。
┌──────────────────┐
│ 主要簿 │
│ ┌────┐ ┌─────┐ │ ┌─────┐
取引 ───→│仕訳帳 ├──→│総勘定元帳├──→│ 試算表 │
│ └────┘ └─────┘ │ └─────┘
└───┼──────────────┘
┌───↓──────────────┐
│ 補助簿 │
│ │
│ 「仕入先元帳」 │
│ 「得意先元帳」 など │
└──────────────────┘
“簿記の流れ”は、取引きが発生するたびに、「仕訳帳」という帳簿に記帳をおこないます。そして、「総勘定元帳」という帳簿に科目ごとに転記します。
この「仕訳帳」と「総勘定元帳」は、決算書の「貸借対照表」や「損益計算書」を作成する資料になる重要な帳簿なので “主要簿”と呼ばれます。
また、特定の取引に関して「仕入先元帳」「得意先元帳」やら「当座預金出納帳」「小口現金出納帳」などの帳簿(これを”補助簿”といいます)に記入します。
そして、間違いなく転記されたかどうか、”貸借一致”を確認するために、「試算表」を作成します。
では、おもな帳簿の特徴を見ていきましょう。
「仕訳帳」は、取引きを発生順(日付順)に記録する帳簿のことをいいます。
取引きが発生するごとに、取引日と摘要欄に”勘定科目”および取引内容を説明書きし、借方・貸方欄に金額を記入していきます。
前回にも説明しました取引きを「仕訳帳」に記入すると、以下のようになります。
(1) A商店より、パソコン5台(1台20万円)を現金で購入した
(2) 得意先B商店から、商品100万円を仕入れ、代金は後日支払うこととした
(3) C銀行から、現金200万円の借入をした
仕訳ではこう表現すると説明しましたが、実務的には「仕訳帳」に以下のように記入することになります。
仕 訳 帳 7
───┬───────────────┬─┬─────┬──────
平 成│ 摘 要 │元│借 方│貸 方
×年│ │丁│ │
─┬─┼───────────────┼─┼─────┼──────
10│10│(備 品) │ 7│ 1,000,000│
│ │ (現 金) │ 1│ │ 1,000,000
│ │ A商店よりパソコンを購入 │ │ │
─┼─┼───────────────┼─┼─────┼──────
10│12│(仕 入) │ 9│ 1,000,000│
│ │ (買掛金) │ 8│ │ 1,000,000
│ │ B商店より商品を購入 │ │ │
─┼─┼───────────────┼─┼─────┼──────
10│13│(現 金) │ 1│ 2,000,000│
│ │ (借入金) │ 5│ │ 2,000,000
│ │ C銀行より借入れ │ │ │
│ │ │ │ │
パソコンを簿記の上では「備品」と表現すると言いましたが、これだけでは、「パソコンを買った」という事実は見えなくなってしまいます。実際、「備品」勘定で処理されるのはパソコンばかりではありません。プリンタもパソコンデスクだって「備品」で処理されます。
そこで、集計上は勘定科目を使う一方で、仕訳には「摘要」として取引の詳細を書き添えます。
上の例では、
(摘要)A商店よりパソコンを購入
などと記録する訳です。
もう一度「仕訳帳」の見本を見てください。
「仕訳帳」には元丁欄、次に説明する「総勘定元帳」には仕丁欄という欄があります。この欄にそれぞれ対応するページ数を記入し、互いに参照できるようになっています。
こうすることにより、必要に応じて、集計結果から「仕訳帳」までさかのぼり、取引の細かな「原因」まで特定できるわけです。
「総勘定元帳」の説明の前に・・、”勘定科目”とは何でしょう。
“現金”は”資産の勘定”と説明してきました。同様に”備品”も”資産の勘定”になります。一方、”借入金”は”負債の勘定”になります。
つまり、資産・負債などの各要素の具体的な区分を”勘定科目”といいます。
例えばパソコンは、「備品」で表現します。この「備品」のことを”勘定科目”といいます。
「資産」が大分類で、「現金」や「備品」が中分類という関係になります。勘定科目は、集計記録のための集計の単位ということになります。
□資産 ─┬─ 現金
├─ 預金
├─ 土地
├─ 建物
├─ 備品 ── パソコン、机、椅子
├─
□負債 ─┬─ 借入金
├─ 未払金
├─
勘定科目は自由に設定できますが、最終的に集約される決算書には報告義務があるものですので、ルール化されたものになります。 「現金」「当座預金」「備品」「借受金」「売上」「仕入」...などなどいろいろあります。
取引の仕訳をする際に、どの勘定科目を使うかが簿記検定の大きなテーマになります。
「総勘定元帳」は、たんに「元帳」ともいいますが、「仕訳帳」の内容をすべて、勘定科目ごとに記入する帳簿です。 勘定科目ごとにページがきめられ、仕訳帳から勘定科目別に転記して作成します。
仕訳帳に記載される借方の金額は、元帳のその勘定科目のページの借方へ、仕訳帳の貸方は元帳のその科目の貸方へと転記し、残高を記入していきます。
残高は、例えば資産の勘定科目は借方が根拠地なので、前の残高より +借方 -貸方=残高となります。
なお、貸借の欄は、残高が借方なので「借」ということです。
現 金 1
───┬───────┬─┬────┬────┬──┬────┬
平 成│ 摘 要 │仕│借 方│貸 方│借 │残 高│
×年│ │丁│ │ │ 貸│ │
─┬─┼───────┼─┼────┼────┼──┼────┼
10│ 1│(前期繰越) │/│ │ │ │ 5,000│
│10│ 備 品 │7│ │ 1,000│借 │ 4,000│
│13│ 借 入 金 │〃│ 2,000│ │〃 │ 6,000│
│ │ │ │ │ │ │ │
試算表は、総勘定元帳の科目ごとの合計または残高を集計した一覧表で、「仕訳帳」から「総勘定元帳」に間違いなく転記されたかどうか、借方と貸方の照合、つまり”貸借一致”を確認するための計算書です。
合 計 残 高 試 算 表
平成×年12月31日
───────────┬─────────┬───────────
借 方 │ │ 貸 方
─────┬─────┤ 勘 定 科 目 ├─────┬─────
残 高│ 合 計│ │ 合 計│ 残 高
─────┼─────┼─────────┼─────┼─────
365│ 900│ 現 金 │ 535│
150│ 350│ 商 品 │ 200│
100│ 100│ 備 品 │ │
│ 50│ 借 入 金 │ 200│ 150
│ │ 資 本 金 │ 500│ 500
│ │ 商 品 売買益 │ 90│ 90
│ │ 受 取 手数料 │ 10│ 10
60│ 60│ 給 料 │ │
25│ 25│ 支 払 家 賃 │ │
50│ 50│ 支 払 利 息 │ │
─────┼─────┤ ├─────┼──────
750│ 1,535│ │ 1,535│ 750
─────┴─────┘ └─────┴──────
決算手続きを円滑にするため、決算のときには必ず作成しますが、毎日、毎月など必要に応じて作成します。貸借平均の原則(貸借一致のことです)で借方残高と貸方残高の総合計は一致しますので、転記ミスを検証することができます。
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以上のように取引が発生するごとに帳簿に記帳することが、簿記の日々の作業ということになります。これを”期中の取引き“といいます。
そして決算時期には”決算手続き”を行い、「決算資料」を作成することになります。
簿記は手続きがたいへん! という印象を持たれるかもしれません。確かに、間違いなく手続きをふまないと決算書まで到達しません。
簿記は、帳簿に記録することですが、その手法は「紙と鉛筆とそろばん・電卓の世界」で発展してきたものだと思います。
しかし、「今やI T の時代」です。
実際には、「仕訳帳」を用いず、会計ソフトや会計システムに入力するという会社や商店が一般的になっています。
こうすれば煩雑で間違いやすい帳簿から帳簿への転記ミスが生じません。パソコンはデータ加工がお手のもの。 いったん入力したデータを自在に加工して表現できます。集計なんか即座に集計できるのですから。