乾杯の歌 ~ 歌劇 「椿姫」 より ~

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Giuseppe Fortunino Francesco Verdi
Brindisi   ≪La Traviata≫ Atto Primo

<イタリア語歌詞> <日本語歌詞>
Alfred (アルフレード)
リビアーモ  リビアーモ ネ リエーティ カーリチ
Libiamo, libiamo, ne’ lieti calici
友よ、いざ飲みあかそうよ
ケッ ラ  ベッレッツァ インフィオーラ
che la bellezza infiora,
こころゆくまで
エッ ラ フッジェーヴォル フッジェーヴォル オーラ
e la fuggevol, fuggevol, ora
誇りある青春の日の
スィネーブリ アッ ヴォルッタァ
s’inebrii a voluttà!
楽しいひと夜を!
リビアム  ネ  ドルチ フレーミティ
Libiam ne’ dolci fremiti
若い胸には
ケッ  スッシタ  ラモーレ
che suscita l’amore,
燃える恋心
ポイケェッ クエッロッキオ  アル コーレ
poichè quell’occhio al core
やさしいひとみが
オンニポテンテ  ヴァ
onnipotente va!
愛をささやく
リビアーモ   アモレ  アモル フラ イ カーリチ
Libiamo, amore, amor fra i calici
またと帰らぬ日のために
ピュウッ カルディ バーチ アヴラァ
più caldi baci avrà
さかずきをあげよ!
Violetta (ヴィオレッタ)
トラッ ヴォイ トラッ ヴォイ サプロォッ ディヴィーデレ
Tra voi, tra voi saprò dividere
この世の命は短く
イル テムポ ミーオ ジョコンド
il tempo mio giocondo;
やがては消えてゆく
トゥット エッ フォッリーア フォッリーア ネル モンド
tutto è follia, follia nel mondo,
ねー だから今日もたのしく
チョッ ケン ノネェッ ピアチェル
ciò che non è piacer!
すごしましょうよ!
ゴディアム フガーチェ エル ラーピド
Godiam, fugace e rapido
このひとときは
エェ イル ガウディオ デッラモーレ
è il gaudio dell’amore,
ふたたびこない
エェ ウン フィオル ケン ナッシェ エ ムオーレ
è un fior che nasce e muore,
むなしくいつか
ネェッ ピュウッ スィ プオッ ゴデル
nè più si può goder!
過ぎてしまう!
ゴディアム チンヴィータ チンヴィータ ウン フェルヴィド
Godiam, c’invita, c’invita, un fervido
若い日は夢とはかなく
アッチェント ルズィンギエル
accento lusinghier,
消えてしまう
アー アー ネ スコプラ イル ディ
ah! ah! ne scopra il di,
あー あー 過ぎてゆく
アー アー ネ スコプラ イル ディ
ah! ah! ne scopra il di,
あー あー 過ぎてゆく
アー スィー
ah! si!
あー あー

<作詞 Francesco Maria Piave>

※ 合間にはいる一同の歌や後半は省略しています。

 《 直 訳 》
(アルフレード)
楽しい盃で酒を飲みほそう、
美が花で飾る楽しい盃に。
そしてはかなく去っていく時が
快楽で酔いしれるように。
楽しい盃で酒をのみほそう、
恋が呼び起こす、あまいおののきのうちに。
あのまなざしこそ、(ヴィオレッタを指しながら)
この胸には全能なのだから
盃をほそう、盃を交わすうちに
恋はより熱いくちづけを得るだろう!

(ヴィオレッタ、立ち上がって)
みなさんと一緒にいると
楽しい時をともに分かちあうことができますわ。
この世で喜びでないものは、
すべて愚かなものです。
楽しみましょう、はかなく、すばやく去っていくのが
恋のよろこびです。
それは咲いては散る花、
二度と楽しむことはできません。
楽しみましょう、熱くこころよい言葉が
私たちをいざなっているのですわ。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

《椿姫》 は、《リゴレット》 《イル・トロヴァトーレ》 とともに、ヴェルディ、中期の三部作と呼ばれています。
初演は1853年3月6日、ヴェネツィアのフェニーチェ座。
原題の “La Traviata” とは、「道を踏み外した女」 という意味です。
当時は珍しい現代劇で、高級娼婦をヒロインとした画期的な作品として話題になったものの、
ヴェルディが望んでいた歌手の都合がつかず、ヴィオレッタのイメージとかけはなれた歌手が演じたうえ、
演奏のレベルも低かったため、大失敗に終わりました。
そのときヴェルディは 「わたしの作品が原因か、歌手が原因か、時が証明するでしょう」 と語りましたが、
その言葉どおり、1年後再演されたときには優れた価値が評価され、現在、もっとも人気のあるオペラとなっています。

原作は、1848年に出版されたアレクサンドル・デュマ・フィスの小説 「La Dame aux camélias (椿の花をつけた淑女)」
「三銃士」 「モンテ・クリスト伯」 を書いた文豪、アレクサンドル・デュマ・ペールの私生児で、小デュマとも呼ばれている彼が
20歳のころ数ヶ月同棲していたパリの高級娼婦、マリー・デュプレシ(本名はアルフォンシーヌ・プレシ)との
恋愛経験をもとに書いた小説で、当時のベストセラーになりました。
小説の出版後、わずか数日にして著者自らの手によって戯曲へと改作され、そちらも大成功をおさめています。
小説、戯曲のなかでマルグリット・ゴーティエとされているマリー・デュプレシは黒い髪と瞳の、華奢で優雅な女性で、
何か買って欲しいものがあるときや、劇場に行くときには大好きな椿の花を一輪胸にさしていくのを習慣としていました。
有名なピアニスト、フランツ・リストと親しかったことでも知られています。
青い静脈がすきとおるような白い肌は胸の病を患っており、はかない命であることを物語っていた、との言葉どおり、
肺結核のため、23歳という若さで亡くなりました。
パリのモンマルトル墓地に眠る彼女の墓には、時折彼女が大好きだった白い椿の花が手向けられているそうです。

パリで、戯曲 《椿を持つ女》 を見たヴェルディは感激し、オペラにすることを思い立ちました。
登場人物の名が変更されている以外は原作にかなり忠実となっており、今では原作よりオペラのほうが有名です。
原作は18世紀ですが、現在の公演では19世紀を舞台としているのが一般的です。

 「椿姫」 のあらすじ

1850年頃のパリ。 8月。病弱ではあるものの、男たちの注目を一身に集める高級娼婦ヴィオレッタ・ヴァレリーの館。
自らが主催して頻繁に催す夜会に大勢の客が集まっている。
かねてから、ヴィオレッタに想いをよせている青年、アルフレードが友人のガストーネに連れられて夜会に参加している。
乾杯の歌のあと、ダンスをしに皆は別の広間へ向かうが、ヴィオレッタは気分が悪くなり動けなくなる。
ヴィオレッタを心配し、ひとり残ったアルフレードは体をいたわるよう忠告し、激しい愛を告白する。
友情だけにしようというヴィオレッタの答えに、アルフレードが宴を去ろうとしたとき、
ヴィオレッタは胸にさしていた一輪の椿の花を手渡し、この花が枯れたらまた会いましょうと告げる。
天にも昇る心地で帰っていくアルフレード。
客たちが帰り、ひとりになったヴィオレッタはアルフレードの愛の言葉が忘れられず、想いにふけるが、
すぐに娼婦としての自分をふりかえり、快楽から快楽へ自由に飛び回って人生を楽しむべきだと、恋の予感を振り切る。

出会いから数ヵ月後、ふたりはパリ郊外の田舎家でひっそりと同棲生活を始めている。
幸福感にひたるアルフレードだが、生活費はヴィオレッタが宝石などを売って工面していた。
それに気づいたアルフレードは良心が痛み、この恥辱をそそぐべく、パリに発つ。
ヴィオレッタのもとにアルフレードの父、ジェルモンがやってくる。
ヴィオレッタのために息子が破滅に向かっているというジェルモンの言葉に、ヴィオレッタはむっとし、
ここの生活費を出すために、全財産を手放した書類を見せる。
ヴィオレッタの人柄を理解し、誤解をわびるジェルモンだが、娘の結婚のため、息子と別れるよう頼む。
親戚もなく、病魔によって余命いくばくもない自分から愛する人を奪わないでほしいと訴えるヴィオレッタだが
やはり息子と別れてもらいたいと切々と説得するジェルモンに、とうとう別れることを決意する。
ヴィオレッタはアルフレードに別れの手紙を残し、パリへ戻ってしまう。
その手紙を見たアルフレードは裏切られたと思い、故郷へ戻ろうと言う父の言葉に背を向けパリへ追って行く。

1月。ヴィオレッタの友人フローラの館では、仮装パーティが開かれている。
アルフレードが現れ、皆とカード(賭け)をはじめる。
そこにドゥフォール男爵と現れたヴィオレッタは、アルフレードが来ているのを知り、自分の不用意さを後悔する。
ヴィオレッタは彼を呼び出し、この場を去って欲しいと頼むが、アルフレードは逆上し、人々を呼び集め、
賭けで買った金を、同棲していた頃の生活費だと叫んで、ヴィオレッタに投げ侮辱する。
ヴィオレッタはグランヴィル医師とフローラの腕の中で気を失う。 そのとき父親のジェルモンが入ってくる。
人々とジェルモンはアルフレードを非難し、彼も後悔する。

2月、謝肉祭の日。パリのみすぼらしいヴィオレッタの寝室。
死の影が近づいたヴィオレッタは女中のアンニーナと二人きりでひっそりと暮らしている。
胸の病は重く、すでに自力ではベッドから起き上がることもできない。
そこにたずねてきたグランヴィル医師はあと数時間の命だろうとアンニーナにそっと告げる。
いまのヴィオレッタのささやかな慰めは、ジェルモンから届いたお詫びの手紙を繰り返し読むこと。
そこにはジェルモンが真実をアルフレードに打ち明け、彼とアルフレードが許しを求めに訪れると書いてあった。
鏡に自分を映したヴィオレッタは、「道を踏み外した女(トラヴィアータ)の願いに微笑みください」 と神に許しを請う。
父から事情を聞いたアルフレードが現れ、二人は互いの名を呼びながら抱き合う。
パリを離れて、またひっそり暮らそうと夢見る二人だが、ヴィオレッタにはもう服を着替える力すら残されていなかった。
アンニーナはグランヴィル医師を呼びに行き、駆けつけたジェルモンとともに3人で戻ってくる。
娘としてヴィオレッタを抱擁し、後悔の念に満たされて二人を祝福するジェルモン。
不意にヴィオレッタから痛みが消え、生き生きとして起き上がった。
しかし次の瞬間、再びソファに倒れ、短い生涯を終える。